私的録音録画小委員会中間整理について、要点をまとめる努力をしてみた
違法コンテンツのダウンロードの違法化でにぎわせている「私的録音録画小委員会」についてです。津田さんのインタビューを見ました。2007/10/16 からパブリックコメントの受付が始まりました。以下の電子政府のサイトを参照してください。
たぶん今回も権利者側はパブコメの動員をやってくるんじゃないですか。半ば「業務」として命令されたら、そりゃパブコメも書きますよ。でも全体の数でいえば、権利者側の会社に勤めている人よりもネットユーザーのほうが圧倒的に多いわけです。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/12/news014_2.html
こういう事情もあり、ネットユーザーも思うところがあるのであれば、パブリックコメントを送付してください。2ch などでは「パブコメって聞くのは必須だけど、内容を反映させる必要ないんだよなw」とか「本格的に日本終わったな」とか書いている人がいるようですが、世の中は行動を起こせば変えられます。行動してください。
募集要領(pdf, A4 2枚)を見ればわかりますが、パブリックコメントの送付は非常に簡単で、特定のフォーマットに従ってメールを送信するだけです。フォーマットも、「文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会中間整理(pdf, A4 161 枚)」というドキュメントの該当部分を抜き出して、自分の意見を書くだけです。
このドキュメントについても誰か要約を出してほしいところです。一読したところ、A4 161 ページもあるのに目次も見当たりません。(--; 読ませる気ゼロです・・・と書きたいところですが、この程度でひるむ人には、物事に意見する資格はないってことですね。
ここはひとつ、攻略方法をまとめてみます。カッコ内はドキュメントに記載されているページ数です。最初に表紙が二枚あるので、+2 すると Adobe Reader のページ数と一致します。
- 第1章(P3)は、歴史的経緯を説明しています。背景を知るには重要な章ですが、第3節(P8)は私的録音についてわかりやすくまとまっているので、読むべきでしょうね。
- 第2章(P11)は、私的録音録画の現状(機器の普及率、録音録画の際に使用する機器についてなど)に触れています。数字が出てくる章です。
- 第3章(P30)は、私的録音録画補償金制度の現状についてです。
- 第4章(P41)は、保護技術についてです。
- 第5章(P59)は、違法サイトからの私的録音録画の現状についてです。ここも数字が出てきます。ファイル交換ソフトの利用をやめた理由(P70)という項目があり、著作権侵害問題を理由に使用をやめた人が 26.4%(第二位)あるという記述があります。これが、ダウンロード違法化の根拠の一つにもなっているのでしょう。
- 第6章(P77)は、外国の現状についてです。
- 第7章(P97)は、検討結果が述べられています。ここが一番重要です。第2節(P100)が、ダウンロード違法化の話題と関係があります。著作権第30条にて、私的録音録画の適用範囲が定められているのですが、本節では、30条の適用範囲に何を含めて何を除外するのかが書かれています。
以下、本ドキュメント P105 より抜粋。津田氏の意見と思われます。
これに対して、違法対策としては、海賊版の作成や著作物等の送信可能化又は自動公衆送信の違法性を追求すれば十分であり、適法・違法の区別も難しい多様な情報が流通しているインターネットの状況を考えれば、ダウンロードまで違法とするのは行き過ぎであり、インターネット利用を萎縮させる懸念もあるなど、利用者保護の観点から反対だという意見があった。
私の意見としては二点です。
一つは、津田氏の言う「著作権保護技術やるくらいなら私的録音録画補償金を払う(乱暴な要約で申し訳ないです)」という意見は妥当であるということです。媒体にかける場合、消費税的な集め方をするコンテンツ税みたいになってしまいますが、お金を出せば意識しないで利便性を確保できるという点は重要です。保護技術で CD から iPod にコピーできないとか、最悪です。
媒体を変更したら(レコードから CD、VHS から DVD とか)再度ビジネスをしたいという権利者の思惑もあり、保護技術で私的録音録画を一切できないようにしたいと考えている人も(少々極論ですが)いるでしょう。これは、コピーの作成コストが下がっている現状、ビジネスとして成り立つこと自体が問題です。そろそろコンテンツにお金を払ったら媒体を問わずに使用できるようにすべきでしょう。そういう意味では、私の意見は私的録音録画補償金と矛盾します(私的録音保証金は、コンテンツ購入時に払っており、個別の媒体に払う必要はないというのが私の意見)。しかし、社会全体を見ればまだ「媒体を問わずに」という状態が時期尚早であること、「CD の貸し借りなど対処できない現実があること」も事実なので、「妥当」であると考えました。
もう一つは、ダウンロードの違法化は、架空請求などの温床になる可能性があることから、まずはアップロード業者をたたくことから始めてくださいというスタンスです。ちなみに、Youtube、ニコニコ動画などは、アップロード者が権利者という原則があるので、「違法サイト」とは認識されません。
つまりは私の意見は津田氏の意見と同様ということです。津田氏は相当考えを練って意見を言っており、理想ではありませんが現実の最適解に限りなく近いものになっている気がします。
とにかく、「じじいは何もわかっていない的な技術的なツッコミ」はいらないと思います。利用者の利便性、権利者の利益、全体の妥当性(完璧な制度は不可能なので、より多く現実問題に対処できる妥当性)を考えた意見を出しましょう。
私ももう少し本ドキュメントを読み込んでから、パブリックコメントを送信したいと思います。