生演奏に課金しないで欲しい
ちょっと古い記事ですが、「外国曲をハーモニカなどで生演奏、73歳スナック経営者逮捕」を読んでいて感じたことです。私はアマチュアとはいえ、ピアノを演奏する人間ですから、飲み屋の生演奏に課金することに反対です。
調べによると、豊田容疑者は今年8、9月、経営する同区内のスナックで、日本音楽著作権協会と利用許諾契約を結ばずに、客の求めに応じて、同協会が著作権を管理するビートルズの「イエスタデー」など外国の曲計33曲をハーモニカで演奏したり、ピアニストに演奏させたりした疑い。
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/848210.html
具体的にどの権利に相当するのか私は知りませんが、現在の著作権法的に取り立てることは可能なんだと思います。飲食店の生演奏の場合、演奏された曲目の一覧などを要求しない包括契約となっており、飲食店は JASRAC に一律でお金を払います。金額は JASRAC によって定められています。よくある批判としては、包括契約では適切な著作権者にお金が配分されないというものがあります。JASRAC の実態だと、オリジナルで著作権を持っている場合やクラシックなど著作権の切れた曲主体にしてもお金を請求されるという事例もあります。
しかし、そもそも飲食店の生演奏にまで課金するというスタイルが音楽にとって有用でしょうか。将来的に著作権侵害をしそうだからピアノを撤去という判決もあるそうです。犯罪を起こす可能性があるから楽器を撤去、凄いものです。それなら、JASRAC は飲食店の店員の声も潰したらいいんです。声が出せたら、著作権侵害できますから。
オリジナルと称している曲も元の曲をアレンジしただけで、使用料は払うべきだ
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/911139.html
元来、音楽というのは模倣の塊です。オリジナルかどうかについては、世界中の曲を探し回ってあら捜しをすれば揺るがすことはできるでしょう。(そのため、似た曲があっても、創作であることを証明(似た曲を知らなかったとか)できれば、著作権侵害にはならないという考え方もあったような気はしますが・・・私はその辺詳しくないので誰か教えてください。いや、真似したことを立証できないと著作権侵害は認められないんだっけか。)
音楽家が食べていくために、CD を売ったり、放送権を売ったり、ライブをして入場料を取ったりすることはいいことだと思います。これを守ることに、躊躇するべきではありません。他にも、安定して作曲活動/演奏活動ができるように、お金を流し込む方法を考えてもいいくらいです。でも、場末のスナックの生演奏にまで課金してしまっては、果ては楽器を置くことも禁止されてしまうようでは、音楽文化はだんだんやせ細っていくことにならないでしょうか。
最近の音楽の楽しみ方は二通りに分かれるようです。何かをしながら BGM として楽しむ人と、ライブに行ったり、自分で演奏したりしてどっぷりと音楽につかるような人です。最近は、CD は売れないけどライブ入場者数は増えていると言われているので、この傾向(二極化)が強まっているのでしょう。自分でライブに行くような人は、音楽業界にたくさんお金を落としてくれます。BGM で楽しむような人は、音楽は安ければ安いほどいいでしょう。
音楽業界が儲けるためには、どっぷりつかる人を増やすことです。ビジネスモデルとして、CM 曲やドラマ曲を作ることで、消費者によりリーチする曲を増やして販売数を上げるという手もありますが、現実問題として、消費者は音楽を買わなくなっています。だって、音楽がつまらないから。音楽がつまらない理由は、音楽が悪いのかもしれませんが、消費者が音楽の楽しみ方を知らないのかもしれません。音楽の楽しみ方を知ってもらう方法としては、生演奏を聴く機会を増やすことは有効です。小さな飲食店なら演奏者と聴き手の距離が近いというか境界が曖昧ですから、聴き手が演奏者になって楽器まで買ってくれるかもしれません。
まぁ、権利を持っている人にとっては少しでも多くのお金を取りたいと考えるかもしれません。でも、社会コストを考えれば飲食店の生演奏にまでお金を請求するのはメリットがないと思うわけです。(ここで言う飲食店は小さなところを想定しています。1000 人とか入れる場所になると、また別だと思います。)