平凡なエンジニアの独り言 はてなブログ出張所

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re: ニコニ・コモンズとクリエイティブコモンズ・ライセンスの誤解について瑣末な点ながら指摘する

ニコニコ大会議で発表されたニコニ・コモンズを考えてみる - 平凡なエンジニアの独り言にたいして、ニコニ・コモンズとクリエイティブコモンズ・ライセンスの誤解について瑣末な点ながら指摘する - 半可思惟にて言及いただきました。言及いただいたことのいくつかは、私の文章のいい加減さから来ていると思うので、返信を書きたいと思います。

まずは、言及ありがとうございました。

最初に重要なことだけ

id:inflorescencia さんの言及において最も重要な指摘は「ニコニ・コモンズはライセンスではない」という点です。

ニコニ・コモンズはライセンスではなくガイドラインである

http://d.hatena.ne.jp/inflorescencia/20080706/1215340015

私の頭の中にはライセンス方式しかなく、ガイドライン方式は微塵もありませんでした。

こちらのタンブラーでも追跡可能性が過大評価されているように思いますが、ニコニ・コモンズはニコニコ動画専用ではない*1のですから、もとよりそれほど強力なコントロールを行うことができません。

仮にあるとき突然とある素材が有料化して、それを使った pixiv のユーザーに課金するとします。pixiv は該当ユーザーの情報をニコニ・コモンズに引き渡してニコニ・コモンズがお金を請求するのか、pixiv が集金を代行するのか知りませんが、かなり嫌なことになりそうです。ワンクッション置いて、有料化したら「削除するか」「金を払うか」ユーザーに選択させるという方法もありますが、ニコニ・コモンズ対応サイトが全て同じようなプロセスを構築できるかもわかりません。

追跡情報も自己申告なので、精度は期待できません。楠さんのエントリ(あいまいな日本のニコニ・コモンズ - 雑種路線でいこう)にあるように、ツールまで含めて追跡情報を取るようになれば、そういうことも可能かもしれませんが、さすがに未来を見過ぎている気もします。

そうした事情もあって、私はひろゆき氏や夏野氏の発言をスルーしていました*2。いや、ほんとに。だから、私のエントリでは「この素材は期間限定で利用可能です」という事前に期間を明らかにするケースを紹介していました。

ニコニコの世界では id:inflorescencia さんの言うところの「法的安定性」を確保したい素材もある*3ので、ガイドライン方式を採用するかねぇ・・・と思いつつも、法人を巻き込むならそれも必要かとも思います。

ガイドライン方式とライセンス方式で素材提供者が選択できるならまぁ良いとして、ガイドライン方式だけなら危なくてニコニコ動画外からはニコニ・コモンズを使えないですねぇ。

以下、どうでも良い各論です。

公序良俗問題については条文だけでは判断できないのでケーススタディが必要

CCライセンスでも公序良俗に反する利用は一部対応可能

http://d.hatena.ne.jp/inflorescencia/20080706/1215340015

確かに許諾文書の「4-c」にそれらしき記述がありますね。CCJ にも説明があります。これは知りませんでした。

たとえば「ニコニ・コモンズ対応サイトのpixivにおいて、登録した素材をR-18に使われないようにする」とか多分いくつか具体的な事例に対してどのようなアクションが取れるのか、という個別の話をしていって「CCL が使えるかどうか判断する」ということになるはずです。その過程をすっ飛ばして条文の話だけ出てきても、いまいち納得できるものでもないと思うわけです。

この辺は私の理解では「CCの広報不足」か「CCLの適用範囲外」かわからない*4ので、著作者人格権に関するケーススタディ(場合によっては日本の判例)を紹介して欲しいと思うわけです。

この辺はクリエイティブコモンズに言えって話ですね、すんません。

検索サービスは存在する、が・・・

主張の部分はまったくもってその通りなのだが、再利用されることを前提にした作品を「効率よく見つける方法」については、既にいろいろなアプローチが存在している。

http://d.hatena.ne.jp/inflorescencia/20080706/1215340015

これはその通りですね。CCL コンテンツのホスティングと検索については、以下の記事がよくまとまっていると思います。私も参考にしています。

ただ、検索リテラシーが高い人は良いんですけど、この手のサービスはいまいち欲しいと思うようなものをどう探して良いかわからなくなることが多いですね。ニコニ・コモンズなら対応サイトの作品閲覧ページから素材にたどり着くまで、2 〜 3 クリックでしょうから、少なくともパクるための素材は簡単に見つかるでしょう。

その他、配信サービスに近いところに素材を集積させると、その配信サービスで使いたい素材が集まりやすそうとか、作品に付加されたタグなどから素材をレコメンドできるんじゃないかとか、サービスそのものの質とはあまり関係ないところで検索しやすくなるんじゃないかとか考えてたりします。

*1:今のところ pixiv が対応サイトとして名乗りを挙げています。

*2:この二人はおもしろすぎて何も真面目に取る気になれないのです。

*3:典型例は VOCALOID 関係の素材で、既に CCL ちっくなピアプロのライセンスを適用する文化があり、ことさら不安定なガイドラインを選択したいと思わないでしょう。(彼らはピアプロで満足しているからニコニ・コモンズには来ないという意見もあるかもしれないですけど。)

*4:事例を積んでいけば、CCL が対応できないケースが山ほど出てくるんでしょうけど。