平凡なエンジニアの独り言 はてなブログ出張所

ピアノをこよなく愛するエセRubyistが適当に書き綴ります

ニコニコ大会議で発表されたニコニ・コモンズを考えてみる

ニコニコ大会議に行ってきました。関係者の皆様お疲れさまでした。大変面白い大会議でした。ご招待いただきありがとうございました。

まぁ、会議の模様はいろいろな人がレポートするでしょうから、私はニコニ・コモンズに集中するとしましょう。

ニコニ・コモンズ

ニコニコ大会議での発表を見る限り、ニコニ・コモンズには以下のような特徴があるようです。

  • 素材をアップロードできる素材サーバ
  • アップロード時に素材のライセンスを設定
  • 素材の利用状況を追跡可能
  • API で他のサイトも利用可能
  • ニコニコ動画側からニコニ・コモンズへのリンクを作成(大百科のようなかんじですかね。)

私はコピトレを開発している関係もあって、ニコニ・コモンズには強い興味を持っていますし、幸いにして関係者から話を聞く機会も持つことができている(持たせてもらっている)ので、差し支えのない範囲でニコニ・コモンズについて書きたいと思います。

柔軟なライセンス

ニコニコ動画の中の人からは「クリエイティブ・コモンズは使いにくい」という話を聞くことがよくあります。良くも悪くもクリエイティブ・コモンズは理念であり、個人レベルの利用でも使おうと思うと結構ライセンスに対する深い理解を要求されます*1。ましてや法人向けには限定した形でしか採用できないでしょう。

それでも公開当初はクリエイティブ・コモンズ互換に近いライセンスで運用すると思いますが、ニコニ・コモンズではもう少し個別の著作者の意向を反映しやすい形を目指すと思います。ライセンスに柔軟性が出てくるようになると、より積極的にコンテンツホルダーの参加を促せるようになると思います。

クリエイティブ・コモンズで対応しにくい事例をいくつか挙げてみます。

  • この素材はニコニコ動画以外でも使って構いませんが、公序良俗に反するコンテンツで利用するのはやめて下さい(ニコニ・コモンズもニコニコ動画も公序良俗の規定がありますが。)
  • この素材は期間限定で利用可能です
  • この素材はメールウェア(懐かしい・・・が、今時ないか。ウェブ拍手ウェアとかならあるのかな?)です

自由も大切なのですが、作り手や権利者の合意も大切にできるといいですね。

追跡可能性

素材の利用状況を追跡できる・・・ということは要は著作権の追跡可能性の確保を目指すということです。追跡可能性を確保することで商用コンテンツの投入がしやすくなるという見方はできます。また、利用状況の収集はネット上における著作物の利用とその対価を計算する基礎になる可能性もあります。(自己申告が多数含まれるので、直接は利用できないでしょうが。)

いずれにせよ無制限な拡散を防いで(したい場合は)ある程度のコントロールをすることもできるようになります。素材の作り手にとっても、どのように使われているかわかるのはモチベーション向上になるのではないでしょうか。

検索容易性

良いコンテンツは既にネット上にある、ただそれを見つける方法がわからないだけでも書いたのですが、ネット上には億単位でライセンスフリーな素材が存在していると言われています。ただ、それを効率よく見つける方法は今のところなく、「再利用されることを前提にした素材の集積」はそれだけで価値があります。

これは結構ありがたいと思います。

監視体制の確立

ニコニコだけに、違法コンテンツを排除する監視体制は強力なものになるでしょう。加えてアップロード者の確認なども行うようになるでしょう。おそらく相当適法性の高い素材サイトになると思うので、ニコニ・コモンズ対応サイトの適法化に貢献することになるでしょうから大きな魅力といえるでしょう。

# ニコニ・コモンズ対応サイトを私が作ってしまいたいくらいですww。

本当に期待すること

ニコニ・コモンズにはコンテンツホルダーの皆様とアライアンスを組むような形で MAD や二次創作を公認する仕組み作りを目指して欲しいものです。既に角川とはうまくいきつつあるようですが。ニコニ・コモンズ対応サイトも恩恵を受けることができる*2ので、ネットのかなりの部分が適法化に向けて前進できると思うのです。

なんだかんだ言って、MAD や二次創作は、素材の質に左右されるところがあると思うわけです。

総括

まぁ・・・ネット上には極論もあふれているし、私自身かなりラディカルな立場*3を取っているので、ニコニ・コモンズは少し保守的というかナイーブなアプローチだと考える人もいるかもしれません。

個人的にはニコニ・コモンズがニコニコ動画周りの問題全てを一掃するような劇的な現象を引き起こす可能性は低いだろうなと感じています。ただ、一歩あるいは半歩だけかもしれませんが状況を推し進める材料になると思うので、個人的にも積極的に応援していきたいと考えています。

*1:たとえば、東方の二次創作に対するスタンスをクリエイティブ・コモンズのライセンスで表現しようとすると、かなりトリッキーな使い方をしなくてはならなくなります。

*2:100% ニコニコ動画と同じように扱われるというわけにはいかないでしょうが。

*3:私の立ち位置はコンテンツ税とフリーソフトウェア的な考え方を両立させる感じです。