平凡なエンジニアの独り言 はてなブログ出張所

ピアノをこよなく愛するエセRubyistが適当に書き綴ります

もしコピトレに著作権許諾システムを載せるとしたら?

かなり出遅れましたが、id:banraidou さんの「手軽な著作権許諾システムって、商売にならないかな?/ちょっとした思い付き程度でも、どんどん書いていこうじゃありませんか。 - 万来堂日記2nd」についてです。著作権許諾はビジネスですから、このエントリのように考えている内容はありでしょう。

もし、コピトレに許諾システムを載せるとしたらどうするでしょうか。実際にやるかどうかはともかくとして、いや、たぶん実際にかなりの部分まで作る(信頼性の確保ができないと予想されるので、お金のやり取りまで行きつけるかどうかわかりませんが。。。)と思いますが、まずは思考実験をしてみたいと思います。

一番単純なモデルについて考えてみましょう。A, B, C という作品がコピトレに登録されているとします。A は CCL の by-nc(表示-非営利)+商用作品には一定金額を支払えば二次利用可能というデュアルライセンスを採用しているとしましょう。B という作品は非営利なので、A を by-nc 下で利用します。コピトレの作品情報のページでは、B は by-nc 下で運用されて、ライセンスツリーの検索も可能になるでしょう。C は営利作品なので、コピトレ上でお金を A の作者に支払い、A を利用することとします。

仕組みとして考えられるシンプルな流れを考えると、C の作者がお金を払うと、コピトレは許諾コードを発行し、C の作品情報ページに A の二次利用に関する許諾表示をすることになります。

二次創作が絡むもう少し複雑な状況を考えてみましょう。D という営利作品があるとして、D は C を利用するとします。C もまた、A と同じようなライセンス(非営利と営利のデュアルライセンス)を使っているとします。この場合、D の作者によって C にお金が支払われますが、A にも支払うべきかどうかで判断を悩ませることになります。普通に考えると D の作者は A にも C にも支払わなくてはなりません。これでは以下の理由から現実的なシステムにならないでしょう。

  • n 次創作になると、ものすごくたくさんの作品に大変な金額を払わないといけなくなる(n 次創作を抑制することになる)
    • 直接の派生元と遠い祖先に相当する作品とでは払うべき金額も異なるべき、つまり派生関係の近さに応じた金額設定があるべき
  • 単純に処理対象の作品数が多いと作業が煩雑になる

仮に組曲『ニコニコ動画』の二次創作を作ろうと思った時のことを考えてみましょう。組曲『ニコニコ動画』は 30 くらい曲を使っています。組曲『ニコニコ動画』を作る人が権利許諾に走り回るのは仕方がないとして、二次創作を作る人まで同じ煩雑さに目を回すことになりかねません。組曲『ニコニコ動画』には、3000 くらい派生作品があるようなので、30×3000=90000 の処理をそれぞれの制作者がしなくてはならなくなります。まぁ、組曲『ニコニコ動画』は非営利の世界にいますが。。。

こうなると、作品を作った人にお金を払ったら、派生関係の距離に応じて「自動的」に元ネタの著作者にお金が支払われるような仕組みを考える必要がありそうです。それがないと今の状況を一歩抜け出すシステムはできないでしょう。

さて、「自動的」という言葉を書きました。確かに、何十億何百億と売り上げのある作品は、煩雑な契約作業も苦にならないでしょうし、利益を最適化するためにはむしろ必要な作業と言えます。しかし、ネット上に多く存在しこれからも増え続けるであろう単体では売上数万円とかそれくらいの作品には、自動的に権利関係を処理する仕組みが欲しいというわけです。

派生先に価値を伝搬する・・・これを理論化してプロトタイプを作った例としては、過去、未踏ソフトウェア創造事業で、PICSY というプロジェクトがありました。さらに古くはこちらの定額式超流通も興味深い提案をしています。いずれにせよ、派生関係のある作品だと、親作品の「貢献度」を「自動的」に設定することが難しく、利害関係者が納得する仕組みを作ることは困難を極めるという結論にいたります。まぁ、困難は克服するためにあるものですが。

もう二つ実験してみたいことがあります。一つは、コンテンツの証券化であり、もう一つは、コンテンツ税とその分配です。まぁ、その未来像はおぼろげすぎて私には輪郭すら見えませんが。

コピトレで許諾システムを組み立てるとすれば、以下に留意して実現を目指すことになるでしょう。実際かなり難しい話になると思うので、夢と現実をどのように切り分けるかが勝負になりそうです。(というか、コピトレそのものが夢と現実をどのように切り分けるかですけど。)

  • 権利許諾はお金が絡むものであっても自動的に処理されるべきである
    • ただし、売り上げの大きい作品を作る場合は利益最適化のために手動で契約を処理してもかまわないだろう(コピトレの処理対象かどうかも怪しい。)
  • 作品の派生関係を考慮して、n 次創作を支援する
    • 権利表記の統一や自動生成など面倒な作業はできるだけ肩代わりする仕組みも必要
  • 貢献度やお金の分配の判断を自動的かつ透明度の高い方法で実現する