クリエイティブコモンズライセンスを適用した作曲者がいるらしいので、ネット時代のライセンスについて考えてみた
「初音ミク」オリジナル曲の作曲者の一人が、自曲にクリエイティブコモンズの適用を表明によると、クリエイティブコモンズライセンスを適用した作曲者がいるようです。
この作曲者は表示・非営利を適用したようです。改変可能というところがまたすばらしいです。まずはグッジョブといいたい。コメント欄によると、非営利がついたのは、初音ミクの使用許諾と関係があるようです。ってことは、最初は表示のみにしようとしていたのか。これはすごい。
こちらの記事に初音ミクに関する使用許諾の細かい点が載っています。こちらの記事を読むと、商用かつ「キャラクターと結びつける場合」「声だけを使う場合」に制限がつくようです。初音ミク作品と CC ライセンスについては、疑問点もあるので、本記事の「初音ミクのライセンスに関する補足」を参照してください。
それにしても、利用規約がわかりにくいというのはいただけません。私の考えでは、クリプトンが「独自」のライセンスしか提示していないことも問題ではないかと感じています。
ネット時代のライセンスとは?
もし、ネットが「誰にでもコンテンツを作成して供給して儲けることができるチャンスがある」世界であるとすれば、それは「小さな労力で世界中にクリエイターが作ったコンテンツを発信して稼ぐことができる」世界でなければなりません。
仮に、コンテンツ作成に使う道具それぞれが、異なるライセンスを提示していたとしましょう。一クリエイターにそのライセンスすべてを把握させることは難しいといわざるを得ません。現状、初音ミク一つのライセンスですら、正確に把握できる人はそれほど多くないのですから*1。となると、法務担当者を持つある程度の規模の企業(もしくは直接交渉できる企業)以外は、結局営利で稼ぐことはできなくなるでしょう。
ネット時代に求められているライセンスは以下のような性質を持っていると考えられます。
- 代表的ないくつかのライセンスである
- わかりやすい
- クリエイターが儲けることができる
- 二次使用に関する規定が明確である
- 再配布に関する規定が明確である
- 改変に関する規定が明確である
初音ミクのようなコンテンツを作る道具は、作成されるコンテンツに対してこうしたライセンスの中から適用可能ないくつかを例示する必要があると思います。
クリエイティブコモンズライセンスも使い勝手のいいライセンスですが、「稼げるかライセンスどうか」という点で疑問が残ります*2。クリエイティブコモンズライセンスは、無償の契約を自動化してくれますが、有償の契約の自動化までは考慮に入っていません。クリエイターが個人もしくは小さな団体である場合、契約に割くコストは無視できないものですから、お金が入ってくる契約を自動化できないと意味がありません。
以下にモデルケースを考えてみました。
仮に作曲者が「とある曲」に関するライセンスを以下のように定めるとします。(金額はいい加減です。)それぞれ権利の購入は Amazon で買い物をするように簡単に買えるものとします。
- 楽曲はサイトで配布*3
- 視聴は自由
- お金を払う窓口はあって、お金を払うとダウンロード+私的複製可。値段はレディオヘッドのように自由に付けられる。
- 再配布権:二次使用権、改変権を許諾したユーザーに、音楽以外のコンテンツと組み合わせたコンテンツと配布する場合、改変後の楽曲を配布する場合に限り許諾。
- 二次使用権:営利作品 1 万円、非営利作品 1000 円
- 改変権:個別交渉
こうしたケースそのものはどうでもよいものなのですが、お金を稼ぐ流れが自動化されないことには、個人や小さな団体にチャンスは生まれてこないということです。
初音ミクのライセンスに関する補足
初音ミクの許諾する範囲では、アニメなどで登場するキャラに初音ミクを使った楽曲を歌わせることが NG となります。これはライセンスの条文を読む限り、商用非商用の問題ではなさそうです。
こちらのエントリに使用許諾が掲載されています。この転載はダークですが・・・。
(c) 映像作品(アニメーションを含む)にて、その作品内のキャラクターが歌声により明らかに歌ったりパフォーマンスしていると取れるような目的で使用する場合。
http://d.hatena.ne.jp/melt_slinc/20070917#p2
上記の場合に別途使用許諾契約が必要と書かれています。商用という文字はなく、営利非営利を問うようには読み取れません。CC ライセンスが許諾する範囲は「動画内でキャラクタが歌っているように見せる」という利用も含みうるため、初音ミクの許諾する範囲と矛盾が発生してしまいます。
クリプトンは非商用については、「基本的に黙認」しています。というか、容認する発言も見受けられます。こちらの記事では CC 可能と書かれていますが、利用許諾(VOCALOIDライブラリ使用許諾契約書)と CC ライセンスが矛盾していることは事実であり、これはクリプトンの社長が容認していたとしても、現状では CC ライセンスを適用するのはリスクです。ピアプロで CC ライセンス互換のライセンスを提供しているのなら、そちらの適用をすべきでしょう。
クリプトンが CC ライセンスの適用を妨げるようなことをするとも思えないので、使用許諾契約書が実態に追い付いていないだけだと思いますが。。。