平凡なエンジニアの独り言 はてなブログ出張所

ピアノをこよなく愛するエセRubyistが適当に書き綴ります

結局、下請け構造の悲しさってやつか

テレビ局はアニメのお金の中抜きをしているか?というエントリを読みました。わかりやすくてとても良いエントリだと思います。納得もできます。こちらのエントリは図解でさらにわかりやすいです。

テレビ局の中の人は高給取りだからずるい*1・・・という意見もあるようですが、そこはあまり重要じゃないというか。むしろ関係ないというか。テレビ局が節約して今よりたくさんのお金を流してくれたとしても、アニメータの所得が適正になるとは、アニメ産業の構造上考えにくいです。

産業構造の問題であって、テレビ局の給料なんて関係ないということです。*2

上記エントリで語られているとおり、アニメ産業の規模が小さいことが最大の問題でしょう。しかし、問題のすべてではありません。産業規模の問題については、ユーザにも認識されていて、ニコニコやら、映画館やらという意見が出るのは、健全な収益構造をもった産業になって欲しいということでしょう。もうひとつ、下請け構造の悲しさを挙げなくてはなりません。

実のところ、アニメータがニコニコするには、売上が上がればいいのかというとそれだけというわけでもないそうです。こういう記事もあります。(この記事、計算はむちゃくちゃなので、鵜呑みにはできません。ただ、内容はむちゃくちゃでも、アニメータの悲鳴は聞こえてきます。)

だからと言って、アニメの商品をいくら買ってもムダです。
前にも書きましたが、
著作権は企業が全て奪い取っているので、アニメ商品をいくら買っても
アニメーターには1円たりとも入ってきません。

http://www6.ocn.ne.jp/~pancake/ani02.html

DVD を買っても無駄無駄無駄無駄! というわけだそうです。DVD を買っても、「製作」側の会社*3の儲けにはなりますが、制作会社の儲けにはならず、ましてや制作側の非正規雇用であるアニメータにはお金がいきわたらないということです。まぁ、「製作」に食い込んでいる制作会社もあるわけですから、多少は版権収入が制作に行くと思います。

その他、別のサイトですが、この記事では、版権収入をアニメータに還元する仕組みの必要性を説いています。ただまぁ、製作委員会みたいな方式なら、製作側はリスクを背負って当たると大儲け、制作側は大儲けできないけど安定した収入を目指すというのが本来である気がします。もともと、技術サイドというのはそういうものだと思いますから。

思うに、広告代理店が「既得権益です」と言ってお金を抜いていくのは、テレビ局とは関係なく「製作」時の話でしょう。まぁ、「製作」は結構大変な仕事なので、ピンハネしているわけではないでしょうし、出資者なら出資分だけお金を配分されているだけということで、非難されるべきことでもありません。いずれにせよ、「既得権益」というのはたちの悪いジョークです。*4

今ここでは、二つの問題に触れました。一つは、アニメ産業の規模が小さいこと。もう一つは、版権収入がアニメータには還元されないことです。ただ、こう書くと、「製作」側が儲かって儲かってしょうがないという話になってしまいそうですが、そんなこともないでしょう。こちらの記事によると、製作にも食い込んでいる制作会社プロダクション I.G*5 は売上に対する経常利益率が 5% くらいらしいので、優良企業ではありますが、不当に儲けているというほどでもないように感じます。だから、下請け構造の問題はともかく、もっと儲かる業界にする必要性はあります。

製作側はいくつかのタイトルでリスクを分散させることでそこそこ黒字が出て、制作会社は、たぶん、赤字が出ない程度の経営状況なのでしょう。フリーのアニメータは大損し続ける独り負け構造ですね。ここに、アニメータの不満があります。こうなると、結局最後は下請け構造のかなしさみたいな話になってしまうではありませんか。わかりきった結論ではありましたけど。

結局はわが IT 業界と同じ*6・・・というわけですが、下請けと非正規雇用の所得をどのように保障していくかという問題になりそうです。

アニメ業界を応援する消費者側の視点に立つと、払ったお金の効率性という話はありそうです。DVD のような現物は流通コストなども大きそうですが、ネットなどは配信コストが今後も低下していくということであれば、効率のいいお金の払い方にはなりそうです。配信コストはすでに動画共有サイトでほとんどゼロになっているので、お金を払う仕組みさえできれば、実験的に小さなアニメを配信して人気があれば続編を作っていくような小さな制作会社でもビジネスを始められるかもしれません。ネットは配信からお金の回収まで、短いスパンでできるかもしれないという期待もあります。*7

アニメの新規参入リスクを低減するという話は、たぶん業界構造を変える上で効果的なので、今後も誰かが議論するんじゃないかなと思います。

*1:そもそも、地方局だと給料はそんなに高くなかったような気がします。その割に、激務度ではデスマーチ中の IT エンジニアに匹敵するらしいので、普通に死ねる気がします。まぁ、アニメータの方も同じくらい働いていて、年収が 1/3 位だったりするんですけど。キー局はめちゃめちゃ高いらしいので、やっかむならキー局の人にしましょうね。

*2:それでもまぁ、テレビ局を悪玉にすれば、ネットで注目は集めやすいと思います。

*3:企画、出資、宣伝、興行全般を手掛ける会社。制作はアニメ作る側。以前のコメントで胴元が儲かるという話が出ましたが、「製作」側になればもうかるという話でしょう。

*4:出資する金をすでに持っているという意味では、既得権益なのかもしれませんが・・・。

*5:いろいろな記事を読む限りでは、この会社は現場にできるだけいい環境を整えようとしているそうです。

*6:だから、他人ごとには思えません。

*7:公開した月の売り上げは、翌々月くらいには手元に戻ってくるというような感じにできるのではないかと思います。