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平凡なエンジニアの独り言 はてなブログ出張所

ピアノをこよなく愛するエセRubyistが適当に書き綴ります

権利者のロードマップを考えてみた

池田先生が著作権法を文化庁にまかせていいのかというエントリを書いています。Winny のところとかもう少し説明が欲しいところはあるものの、ネットユーザーとしてみれば「こういう内容を論理的にわかりやすく説明できる人が欲しかった!」と言える内容です。

ただ、文化庁も権利者もこのエントリを読んだ時に、感情的な面で拒否反応を示す可能性*1があります。MIAU の立ち位置がよくわからないのですが、池田先生が賛同者に加わることによってかなり先鋭化する(ように見える)可能性もあります。いや、ネットユーザーとしては池田先生のおっしゃることは先鋭的でも何でもないのですが、権利者はそうとらえるでしょう。そうなると権利者とネットユーザーの間で交渉の場が存在しなくなってしまうのではないかとちょっと心配です。

まぁ、すでに交渉の場なんてありえないのかな、とも思うので先鋭化するのも一手かもしれないですけど。もし、今回のダウンロード違法化に関して国会で戦えれば(何万、もしくは何十万の署名とか集まればいけるんじゃないか?)、いやがおうもなく交渉のテーブルに着かざるを得ないでしょうし。

さて、彼を知り己を知れば百戦危うからず・・・ではないのですが、権利者団体がどのようなロードマップを描いているのか想像してみました。

権利者は何を取り締まりたいのか?

まず、取り締まりたいコンテンツは何か考えてみます。

  1. 正規のルートから配信されていないコンテンツの複製
  2. 保護技術を回避したコンテンツの複製

「正規のルートから配信されていないコンテンツの複製」ですが、P2P、動画配信サイト、違法アップローダーなどのコンテンツでしょう。プロバイダ責任法があるため、権利者の削除要請に応じているサービス運営者の責任を問うことはできないことが一つポイントと言えます。

「保護技術を回避したコンテンツの複製」ですが、話題になったフリーオでも何でもいいのですが、そのような製品なり技術なりを使用してコンテンツを複製することです。

合法マークを使って、ウェブサイトの締め出しを行いたいと考えているのではという指摘もありますが、この辺はちょっとわからないので、保留しておきます。

どうやって取り締まるのか?(現状編)

フリーオのような保護技術回避手段を取り締まる場合ですが、これはすでに第三十条の第一項第二号により、保護技術を回避したコンテンツの複製は第三十条の対象外となっており、違法です。第百二十条の二で配布することも製造することも違法です。回避したコンテンツをアップロードすれば、公衆送信化権を侵害したことになります。

これらは、罰則の有無はともかくとして、権利者はそれぞれ何らかのアクションを取ることができます。

悩ましいのは、P2P のような公衆送信化権を侵害したユーザーを取り締まっても、違法コンテンツの流通を妨げることができないという事実です。法律というよりは、技術的な問題も含んでいます。権利者は Winny 開発者の逮捕ではなくて、必要な機能の実装を求めるようなアプローチをすべきだったのでしょうね。これを取り締まる場合には、確かにダウンロードを阻止するしかありません。

どうやって取り締まるか?(未来編)

文化庁のねらいは、従来の違法複製機器を売る業者を取り締まることから一歩進んで、個人の私的複製も取り締まることにある。したがって単なる違法化では個人の自宅に踏み込むこともできないので、刑事罰を課して警察が強制捜査する方向に強化されるおそれが強い。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/92fc0fe76ef2af3be2fbd9296e9fdde7

池田先生のおっしゃるとおりであれば、権利者団体の次の手は、「情を知って」という項目をはずし、「刑事罰」を追加して、「非親告罪化」するという流れになるはずです。まとめると以下のとおりです。

  1. 保護技術回避に関する条項はすでに完了している(と思う。やり残していることって何かあるんですかね?)
  2. ダウンロード違法化(罰則規定なし) ← 今ここでやりあっている
  3. 私的複製の「情を知って」という項目をはずす
  4. 私的複製に刑事罰を追加する
  5. 著作権法の非親告罪化を行う
  6. 最終的には第三十条を廃止
  7. 警察が取り締る際に必要な法整備(この辺はまだちゃんと考えていません。すでにある程度整っているような気もします。)

法律整備が完了すれば、DRM が完全な保護技術である必要がないこともわかります。技術的には違法ダウンロードしている人を見つけ出すことは(法律的な制約がなければ)ある程度可能だと思うので、はずせるものでも保護技術をかけているという事実の方が重要なのです。あとは警察に取り締まってもらえるわけですから。

権利者がすべて DRM という意味は、DRM のかかっていない(彼らの)コンテンツは違法コンテンツという状況を作りたいのかもしれません。そうすれば、第三十条の有無にかかわらずデジタルコンテンツの複製はいかなる場合でも違法になりますから。

取り締まる意味はあるのか?

まず基本的な問題は、日本レコード協会などのいう「違法着うたによる被害が深刻だ」という今回の改正の前提とされる事実が、今まで一度も定量的に証明されたことがないということだ。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/92fc0fe76ef2af3be2fbd9296e9fdde7

池田先生がご指摘されているとおり、経済学的な意味を証明することはできないようです。とはいえ、「ムカつくから捕まえたい」という権利者の欲求がある限りは、取り締まる意味は「ある」と言わざるを得ないのでしょう。

池田先生が指摘される委縮効果によって、経済の全体から見れば不利益を被るのですが、著作権法がある限り、また今の流れで改正が進む限り、「権利者のムカつき」は「経済全体の不利益」に優先されます。とはいえ、人間の感情的な面を否定するわけにもいかないでしょう。

では、我々はどうするのか?

法整備よりも何よりも、我々は事業者や権利者を選べる状況を作り出す必要があるように感じます。経済的な不利益が証明されていないにもかかわらず、現状に対する「ムカつき」だけで規制を始めてしまうような人たちには、退場願わなくてはならないのですが、その退場方法は市場の原理に任せるべきだと思われます。

市場の原理に任せるためには、合法の旧制度と新制度(制度というか流通ですね)が存在していて競争しあうような状況でなければなりません。では、それをどのように実現していくのでしょうか。

私はソフトウェアの世界の潮流を見ている限りは、適切なライセンスとシステム(情報システム)があれば現行の著作権法でもネットを前提としたビジネスモデルを構築できるように思います。もちろん、新しい制度が運用しやすい著作権法に改正していくという話も必要ですが、その姿がまだ見えていない以上、見えてくるまでは法律は据え置く方が消費者にとっては有利です。

まずは、「権利者の法律改正を可能な限り遅らせること」を考えなくてはなりません。時間を稼いで、新制度案を考えていきましょう。そこで、権利者が乗ってくるならよし、乗ってこないなら・・・。

参考

著作権法の条文はこちらからどうぞ。

こちらの記事によると、フリーオ著作権法で取り締まれるかどうかは、グレーとのことです。条文を読んでも、「用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、又は送信する方式」とあるので、コンテンツを暗号化した場合、厳密には「コンテンツとともに」ではないので、対象内とは読み取れないということですね。ただ、法律の趣旨を考えると「同等の行為と認定」される可能性があるのでグレーということでしょう。勉強になるなぁ・・・。

*1:というか、今の権利者の反応に論理的な意味はあるのか?