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ニコニ・コモンズはクリエイティブ・コモンズに対応すべきか

ニコニ・コモンズが発表されてからしばらくが経ちました。盛り上がりは地味ですが、システムのコンセプトは既に実装されており、今後の動向が気になるサービスです。ニコニ・コモンズのあり方は、ライセンス方式を採用せず、ガイドライン方式になっていたり、開始当初はコンテンツホルダーは基本的に参加していないなど、私の予想とかなり違う所にいます。

特に、「コモンズ」と冠した作品アップローダであれば、クリエイティブ・コモンズとの関係も気になるところです。以下のような記事を読むと、ニコニ・コモンズに対する厳しい見解もあるようです。

そこで、ニコニ・コモンズがクリエイティブ・コモンズのライセンス(CCL)に対応すべきかどうか検討してみました。

ニコニコのコンテンツの傾向

ニコニコの基盤は今のところオタクコンテンツと言えるでしょう。いわゆる御三家(アイドルマスター、東方、初音ミクVOCALOID))がそうです。それ以外のコンテンツもアニメ、ゲーム、マンガ由来のものが多いのです。やってみた系(演奏、歌、踊り)なら、JASRAC 管理下の音楽だったり、アニメ・ゲーム音楽だったり、ごくわずかにクラシックだったりです。

参考までに、コピトレに登録されている東方の派生創作の推移を記述した動向グラフです。ニコニコ動画においては、派生創作がとにかく多くて、万単位で存在します。(何十万単位かも。)

テレビ由来のものもかなりありますが、これは削除対象である場合が多いようです。ゲームやアニメでも黙認する方向のものと、角川のように公認する方向のものと、削除する方向のものと対応は分かれているようですが、CCL やニコニ・コモンズなどを活用してオープンにしていこうという流れはまだそれほどないようです。

いずれにせよ、CCL 由来のコンテンツはあまりありません。ただ、思想的に影響力がないわけではありません。たとえば、VOCALOID 系のライセンス(ピアプロのライセンス)が、CCL との互換性は必ずしもありませんが、考え方は近いものになっています。が、CCL になっていない理由もあります。(その理由が解消されればピアプロが CCL になったり、ピアプロのライセンスが CCL 互換になったりするかもしれませんが、大人の事情・・・というか商売上の事情で結局別個のライセンスのままかもしれません。)

同人でよく使われるガイドラインや黙認の表明

ニコニコ動画に上がっているコンテンツの多くは CC の世界とは異なる生態系にあるものでもあります。ここでは同人系に触れます。

日本の同人文化はご存じの通り、二次創作に関するガイドラインもしくは黙認の表明による方式で運用されています。以下の著名なガイドライン及び作者の方々の見解を読んでみてください。確かに曖昧ですが、背景に流れている思想、どういう利用をして欲しいのか読み取ることができます。総じて言うと、「設定の解放」「オリジナルデータを再利用しない」「非営利」「別の作品と組み合わせない」「許諾を与えているわけではない」などのルールがあるようです。割と条件を守ればウェブサイトなどの掲載も許可して(見逃して)いるようです。

さて、悩ましいことは、今のところニコニ・コモンズがこうした事情に対応できているかというと・・・うーむ、よくわからんという状況だということです。少なくとも、東方の二次創作をニコニ・コモンズにアップロードするのは難しいでしょう。(盛り上がりが地味なのはこの辺にも問題があるのでしょうね。)

ニコニ・コモンズはクリエイティブ・コモンズに対応すべきか

ニコニ・コモンズはいずれは CCL に対応するかもしれません。現状でも、ニコニ・コモンズにアップロードした作品でも、利用条件に注釈をつけられるので、そこに CCL を採用したことを宣言すれば、それは有効なはずです*1。ニコニ・コモンズはアップロードした作品のライセンスの採用を制限しません。そういう運用をしている人もいるようです。

オープンソースにもそれぞれのコミュニティやプロダクトの名前を冠したライセンスが存在するように、個別の事情を無視してまで「世界標準の××ライセンスを採用しなければならない」ということはありません。コンテンツの世界でも、世の中全てを CCL で塗りつぶすのではなく、「多様性」を認めつつ「コモンズ」を守るために何ができるか検討していくことが大切です。

ニコニ・コモンズというかニコニコ動画の世界に登場するコンテンツに CCL のものが多くない以上、ニコニ・コモンズは主役である同人の二次創作との整合性を取ったり、商用系の企業とアライアンスを組むように動いた方が良いと思います。結局それが情報の豊富化につながるはずなのです。

もちろん、システム的に CC に対応するのは簡単なので、世の中の批判をかわすために対応するというのもありだと思います。しかし、結局、実際に楽しまれているコンテンツをいかにクリーンにするかが大切なのです。

*1:ニコニ・コモンズの利用許可条件も生きてしまいますが。