梅田さんと窪田棋士とニコニコ動画
ニコニコ動画が話題になっているので、少し書きます。
大逆転で話題のNHK杯「羽生対中川」戦をニコニコ動画で見た。NHK杯戦を見られるなんてもう何年ぶりだろう。ありがたい。ネットで話題になっているだけあって、確かに凄い大逆転で驚いた。解説が加藤一二三九段だったのも、盛り上がるのにいい組み合わせだったんだろう。
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20071017/p1
上記のエントリを見て、ニコニコ動画で将棋が話題になるなんて珍しいなぁ・・・くらいにしか思いませんでした。コメント欄に窪田棋士からニコニコ動画に関する指摘をされています。(窪田棋士のブログの関連エントリはこちらです。)
該当の動画を見ましたが、将棋の可能性を感じました。面白いですね。私は割と羽生さんが好きで、インタビュー本や NHK のプロフェッショナルなどを見たりしたことがあります。非常に深い考えをお持ちで、共感を覚えます。将棋については、小さい頃に祖父に教えてもらったことがあるくらいで全くの素人ですが、解説とニコニコ動画のコメントを見ながら何とか展開についていくことができました。
ただ強いて申し上げますと、日本国内でも問題コンテンツのアップロードが久しく問題となっている件は、ご承知の事と存じます。
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20071017/p1
【ニコニコ動画に投稿される動画の権利保護について権利者との対話を強化(’071001 株式会社ニワンゴ)】http://info.niwango.jp/pdf/press/2007/20071001.pdf
サービス提供元でも、対策に腐心している最中です。
副次的情報を論拠にしても今回のエントリーはお書きになれたかと存じますが、向後は今少しご配慮下さいます様、謹んでお勧め申し上げます。
ご無礼の段は恐縮に存じますが、今後とも将棋界をどうぞ宜しくお願い申し上げます。
有名人はグレーなものには言及しない方がいいという意見ですね。確かにそれは一理あります。ただ、ニコニコ動画については一視聴者にすぎない梅田さんに自重を求めるのもやりすぎという気がします。
- (1) ニコニコ動画にある動画は違法である
- (2) 著作権侵害は怪しからん
- (3) 視聴者はニコニコを叩くべきだ(ニコニコの視聴は悪いことだ)
まず、(1) です。ニコニコ動画に挙がっている動画は、ニコニコ動画の実情はともかく、アップロードした人が権利を持っている(権利を許諾されている)ということが、見ている側にとっては原則になります。今のところ、ニコニコは合法の動画サイトであり、視聴を非難することはできません。アップロードした人が権利侵害をすることはありますが、それは権利者とアップロード者の間で調整を図るべきです。
また、(2) についてですが、著作権侵害は親告罪ですから、権利を持っている人が通報する必要があります。権利者には黙認するという「自由」もあります。ニコニコ動画はこの黙認の自由の上で成り立っているともいえます。
非親告罪化を話題にする人もいますが、「権利」は行使するかしないかは自由であるべきです。権利者が見回らなくてはならないのがコストだという意見もありますが、権利である以上それを主張するには義務が必要であるくらいに考えればよいかと思います。著作権保護団体のようなものもありますし、権利者が不当に弱い立場に立っている現状があるわけではありません。
著作権は強力すぎる法律です。侵害したことがある人を、小さなものまで含めて単純に数えれば、日本だけで数千万人に及ぶことでしょう。裁判になれば賠償金を取れます。数千万人もの犯罪者を作る法律自体おかしな法律なのですが、そこは世の中を円滑に回すために「著作権は親告罪である」という抜け道を作っているわけです。想像するしかありませんが、梅田さんのおっしゃる「黙認」も世の中を円滑に回すための知恵ということでしょう。
(3) ですが、現行法ではニコニコの視聴が違法になることはありません。ですから、一視聴者である梅田さんがニコニコを見たという行為を恥じる必要はありません。法律の変更で、将来的にニコニコの視聴が違法になるかもしれませんが、その時はその時で考えましょう。
簡潔なエントリーの中に、斯くも大胆なご提案を内包なさっている等とは、魯鈍にも察し得ませんでした。
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20071017/p1
大胆でも何でもないのです。著作権は親告罪という観点から、動画が残っているということは、NHK が黙認しているという意思表示でしかありません。該当動画が削除されれば、黙認しなかったことが分かるだけです。いずれにしても、現行法律では視聴は違法になりませんし、アップロードした人とニコニコ動画に責任があるだけです。
ただ、梅田さんの発言に NHK は映像を公開すべき的な意味合いが含まれていることは、NHK にとっては非現実的です。(映像作品の著作権については、コンテンツ・フューチャーが分かりやすかったです。)もっとも、NHK の著作権の管理がテレビ業界の慣習にのっとっているとはいえ、税金使っているテレビ局として、あまりに戦略性がなさすぎるということは、嘆かわしいことではあります。
大胆な提案とは、こんなのを言うのだと思っていました。
とはいえ、本エントリは、窪田棋士に自重を求めるものでは決してありません。むしろ、著作権にかかわる問題がわかりやすくなるので、どんどん積極的に議論していただきたいと思う限りです。
あと、一流棋士のプロ戦というものが良質なコンテンツであることが認識できたのは幸いでした。