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平凡なエンジニアの独り言 はてなブログ出張所

ピアノをこよなく愛するエセRubyistが適当に書き綴ります

楽器はね、自由でなければならないのですよ

実際、初音ミクは取り扱いに困る。というか、本当に楽器なのか? - 平凡なエンジニアの独り言についたブクマコメントに対する返信です。ブクマコメントなのでそれほど考えて書いていないでしょうから、本当はスルーすべきなのですが「表現を縛るソフトウェア使用許諾」と「打ち込みと演奏」という本質的な話題を振られては、マジレスするしかないではありませんか。

「表現」に技術的な問題以外の制約を課す楽器はあっていいのか?

まずはid:sezuさんのコメントです。

商用使用は「許諾が必要」であって「駄目」じゃないって書いてある。あと、キャラクターがくっついてくるから「ただの楽器じゃない」けど、「楽器」であることは確かでしょう。

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/akasata/20080319/1205893295

おそらく、「許諾が必要」ということに対する見解の相違だと思います。「許諾が必要」というのは、クリプトンは「ダメという権利も持っている」ということです。許諾条件によってはクリエイターが受け入れることができずに作品を特定の経路で流通できない場合もあります。これは、かなり限定された経路に限るとはいえ「検閲が可能」ということです。

もし、初音ミクが楽器だと主張するなら(技術的には楽器であることは事実です)、ピアノ、ギター、キーボードなどと同列に考えることができます。こうした楽器による「表現」を公開するのに、部分的にせよ「許諾が必要」の上しかも「特定のキャラクタに利用方法が制限される」という時点で、好ましくないものです。

表現の自由とも少し絡んできますが、楽器は表現するためのものであり、「規約によって表現を制約する存在(つまり初音ミク)」を「いかにも権利的にクリアと思わせる楽器と喧伝すること」に強い違和感を覚えているのです。

アマチュアとはいえ一演奏者としては、「そもそも音楽ってのは自由の象徴だろ! 楽器が自由を縛ってどうするんだ!!」って心の声もあるのですが。

クリプトンが「Don't be evil.」を貫けるのならそれでもいいのです。でもそうならなくなったらどうしましょうか。あるいは、クリプトンがつぶれてしまったとしましょう。もう許諾を得る相手はいません。

いや、クリプトンがつぶれてもどこかに営業譲渡されるでしょうから、許諾に関する契約はどこかに残ります。でも、許諾をとる相手が見つからずに勝手に作品を流通させてしまうと、思わぬところから「待った!」がかかるサブマリン特許みたいなことになるかもしれません。

文脈は全然異なりますが、許諾権に関する話題はid:banraidouさんのネット権は片翼だけのJASRACである - 万来堂日記2ndにも書かれています。「許諾が必要」とか「許諾権」にはもっと敏感になるべきでしょう。

ソフトウェアの使用許諾に目を通している時点で、id:sezuさんの意識がものすごく高いことはわかりますし、その上で「個別に交渉すればいい」というご意見も理解できますが、技術的な理由以外で表現に制約を課すものを「楽器」と呼びたくないし呼ぶべきでもないというのが私の意見です。

演奏と打ち込みはそもそも次元が異なる

次は、id:ghostbassさんのコメントです。

そんな手間な事考えずに自分(または自分が歌えば良いんだよ。多分音取り音源としてもだめだめだし、声の個性が強すぎてミク(リン、レン)の世界から逃れられなくなるのになんで「自分で歌う」選択肢を除外するかな

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/akasata/20080319/1205893295

たぶんわかって書いてらっしゃると思いますが、「打ち込みと演奏(この場合は歌)は別物」です。そもそも、自分で歌っても代替にはなり得ません。「midiでピアノ打ち込むなら自分で演奏しろよ」というくらい無茶な話です。打ち込みを行うことはそれ自体にポジティブな理由があるのです。

まぁ、私自身は自分で楽器をやる人間であり、「演奏(歌含む)>>>(越えられない壁)>>>打ち込み」と考えていますが、これは私の個人的な「こだわり」であり、「万人に共通の真実ではない」ことも知っているつもりです。

第一、歌にしたって楽器の演奏にしたって、特別な才能がない人間にとっては(単一の楽器である必要はないが)少なくとも10年くらいはやっていないと聴くに値するまともな演奏なんてできっこありません。仮に「楽をしたいから打ち込み」と言われたとしても納得しますよ。(打ち込みもものすごく大変なので楽できてるかどうか大いに疑問ですけど。)

さて、ある一定の商業的成功を収めた VOCALOID は、順調に進化していけばそのうち打ち込み楽器として使えるものになります。その点を考えれば、今は仕方がないけど将来のために「楽器と名乗るなら楽器らしい使用許諾を作ってもらおうじゃねーか」というのが、私の考えです。