読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

平凡なエンジニアの独り言 はてなブログ出張所

ピアノをこよなく愛するエセRubyistが適当に書き綴ります

続・ニコニコ動画で一番気に入らないこと

昨日書いたニコニコ動画で一番気に入らないことはなかなか反響があってうれしく思っています。はてなブックマークでいただいた反論の中で以下については、私も思うところがあるので、コメントしたいと思います。

  • ニコニコ動画の運用次第
  • 元ネタを明示しないのは「文化」
  • ニコニコよりもステロクや Youtube の方がひどい

ニコニコ動画の運用次第」、つまり、コメントやタグを使えば元ネタを得ることができるという意見です。現状のニコニコ動画の運用では「わかる作品」「わからない作品」、あるいは「わかる人」「わからない人」の偏りが大きくなります。たくさんの作品を使用している MAD はなおさらです。わかりやすい場所にまとめて記載されるべきでしょう。

コメントの中にあったと思いますが、動画投稿者とは別の人でも編集できる Wiki のようなものがあれば対処しやすいかもしれません。

「元ネタを明示しないのは「文化」」、つまり、MAD を楽しむ文化人たるもの元ネタは教養として持っているべきで、明示するのは「無粋」というわけです。なるほど、Culture First だから、明示すべきではありませんね!

そもそも論で言うと、元ネタを教養として知っている人しかニコニコ動画を利用していないのなら、宣伝効果なんて皆無・・・と言えないにしてもほとんどないでしょう。それに、500 万 ID にもなって、まだ見ている側に教養を求めるのでしょうか?

さて、この意見の中には「本歌取り」を例に挙げている人もいました。確かに、動画の中には「本歌取り」に相当する洗練された作品があります。しかし、ニコニコ動画に上がっているコンテンツの大多数はオリジナルをぶつ切りにした「転載」もしくは「コピー(オリジナルを手で書きなおしたものも含めて)」の二次創作であることを忘れてはいけません。

通常、本歌取りの手法を使った短歌を二次創作とは呼ばないでしょう。音楽でもそうですが、裏メロに人のメロディを使ったくらいで二次創作とはふつう言わないものです。教養で楽しめるから OK という意見は、そうしたコンテンツに向けられるべきです。オリジナルを切り張りした MAD などの動画にはちょっと適用できない発想です。

音楽の話が出ました。私は趣味でクラシックピアノを弾いている(かれこれ 20 年以上)ので、その方面からいくつか紹介しましょう。

ピアノ曲の例をあげると、もっとも有名なピアノ曲の一つであるリスト*1作曲の「ラ・カンパネラ」は、「パガニーニによる大練習曲」という曲集に入っています。曲集名のとおり、「ラ・カンパネラ」にはパガニーニの曲のテーマが使われています。

ブラームスの「ハンガリー舞曲集」も有名な曲集ですが、ブラームスは作曲ではなく編曲として出版しています。これは、民族音楽を採譜したところから作っているからです。通常、クラシックの曲集は出版時に作曲番号を振るのですが、作曲ではないという位置づけからハンガリー舞曲集には作品番号がありません。この曲集は訴訟騒ぎ(盗作を訴えられた)にもなりましたが、編曲としたことが功を奏してブラームスは勝訴したそうです。(今なら編曲と明記しても負けそうですが、おおらかな時代だったんですかね・・・?)

逆に、明示していなくてもクラシックの曲には他の曲を裏メロなどに引用した曲はたくさんありますし、流行歌が混ざっていたりすることもあるようです。こうした曲は出典を必ずしも明記していません。しかし、曲の中心に人のメロディーを利用する場合は、曲名に名前を入れて出典を明示することが多いです。そのため、クラシックには「××の主題による○○」という形式の名前の曲がたくさんあります。

意外と細やかな配慮がなされていることがわかります。しかし、「本歌取り」に相当するようなケースに目くじらを立てないようにしていることもわかります。さて、ニコニコ動画に上げられている動画の大多数は、「本歌取り」に相当するでしょうか? 出典の明示したからと言って転載が許可されるわけではありませんが、最低でも出典の明示が必要な二次創作がほとんどのはずです。まぁ、ニコニコがユーザ数 100 人くらいのサービスなら問題ないのでしょうが。(そういう意味で、コミケで流通する同人誌に同じ配慮が必要とは思いません。)

こう書くと格調の高いコンテンツと格調の低いコンテンツがあるような差別感がいっぱいですが、面白さには必ずしも直結していないことも明記しておきます。つまらないオリジナルがあるのと同じように、素晴らしい二次創作があります。

私の個人的な一押しのクラシックピアノ曲は、ブラームスの「ヘンデルの主題による変奏曲」です。曲名のとおり、ヘンデルという作曲家のテーマを使った曲です。二次創作とは言えないオリジナリティを持った曲(作品番号も当然ある)ですが、アレンジよりはオリジナルよりのオマージュです。

何もかもオリジナルのコンテンツが仮に存在するとして、それが聞き手にとって最も感動するコンテンツとは限りません。これもまた草の根的な二次創作文化を否定したくない理由です。

「ニコニコよりもステロクや Youtube の方がひどい(出典を追えない)」という意見はまったくそのとおりです。敢えてニコニコ動画を狙い打ったのは理由があります。

私はニコニコ動画には一種独特の文化があると考えています。動画が始まったら「うぽつ」とコメントするし、終わればやはり「乙」「ありがとう」などとねぎらいます。動画の演出にノって弾幕は貼るし、ニコニコの運営も荒らし対策に力を入れています。これが、Youtube やステロクなら黙ってダウンロードでおしまいです。

たぶん、ニコニコにあるこういった共通の認識のようなものが「文化*2」だと私は思うのですが、この「文化」の中に出典に対する(できることなら金銭的な実効力を伴った)配慮が含められるようになれば、それは素晴らしいことであり、共通文化を持っているニコニコの方が根づく可能性が高いのではないかとも思うわけです。

つまり、期待を込めてニコニコ動画をねらい打ったというわけです。

以下、参考情報です。

追記(2/6 11:32)

id:myrmecoleon さんの指摘より誤字修正。「出展」→「出典」

ありがとうございます! ・・・つーか、はずかしー間違いだ。

*1:リストは優れたアレンジャーとしても知られています。シューベルト=リスト(シューベルト作曲リスト編曲)やシューマン=リストという編曲物は、ピアノの世界では一大勢力を築いています。

*2:お金を取る権利を持っている人たちを文化と呼ぶ主張もあるそうですが。