平凡なエンジニアの独り言 はてなブログ出張所

ピアノをこよなく愛するエセRubyistが適当に書き綴ります

敦煌(井上靖)

かなり前に読んだ本ですが、最近読み返したので紹介します。井上靖の敦煌です。敦煌というと、シルクロードの入り口(中国側から見た場合)です。最近は、ヨー・ヨーマのチェロがすばらしい NHK のシルクロードでおなじみですね。この小説は、20世紀になって、敦煌近くの石窟から大量の経典が見つかり(敦煌文献と呼ばれる)、西域の歴史解明に役立ったという事実を基に、その敦煌文献が石窟に納められた話を創作したものです。

敦煌 (新潮文庫)

敦煌 (新潮文庫)

宋の時代、官吏試験に失敗した一人の漢人・・・趙行徳が、西夏の女に出会ったことから、西域への興味を強くします。趙行徳は見えない糸に引かれるように、聖域に足を踏み入れ、敦煌の滅亡に立ち会うことになります。敦煌に集められた経典もまた戦火によって焼失してしまうはずでしたが・・・歴史の見えざる手は、趙行徳にある特別な役割を担わせることになります。淡々とした語り口調が、歴史の持つある種の冷たさと穏やかさのようなものを、際立たせているように感じました。

シルクロードとか西域とか、中国とはまた少し違った世界ですが、何か歴史に対するあこがれのようなものを刺激される作品です。